幽霊が!
多分私が信じなかったのが原因なのだろう。
だってあの棺桶の中には君とは言い難い黒い塊しか入っていなかったし、あのうるさく動く口も手も、どこにも見当たらなかったから。
葬式だって君の墓の前で泣く人間は只の一人だっていなかったから。
だから
君はまだ私と研究を続けている。
幽霊が!
「でも本当に君は死んでいるようだ。私には確かに君が見えるのに、二人分のパスタはみんな私の前に置かれて、案内される席の椅子はいつも一つで、君はペンだって持ちはしない。…………何か言ったらどうなんだ。もう、私とは口もききたくないのか。そんなにも私を嫌いになったのか?それならどうして私の前に現れた。君と違って年を取っていくままの私の前に、あの時の姿で。目が合った瞬間に口が開いていたあの時の服で、顔で、笑顔で。………そんなに、私の事を憎んでいるのか。ヘルマン、安心してほしい。君がわざわざ、審判を待つ間の休暇でこんなところまで来なくても、私は君にとっくに呪われているんだ。朝起きて初めて口に出す言葉は君の名前で、夜眠る前に思い出すのは君との思い出で、死ぬ前に呼ぶ名前も思い出すのもきっと君だ。ヘルマン。安心してほしい。君の事は忘れないし忘れられない。世界中が君を忘れても。だから早く生まれ変わってくれ。理性の無い動物になって、育てられて、切られて、殺されて、食べられて、そうやってまた人間になってくれ。今度は私が、幽霊になって君に会いに行くから。」
でもおかしいな。君の声は、そんな声だっただろうか。君の姿は、ほんとうにそんな姿だっただろうか…………。
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